約 2,717,201 件
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/8198.html
ばらとえいえんのちかい【登録タグ Team star Dust は 曲 鏡音レン】 作詞:らむね 作曲:ねこぼーろ 動画編集:昇太 唄:鏡音レン 曲紹介 コラボ、Team star Dust第3作目。 バラは二人の永遠の証。変わらない愛。君に約束を誓うよ。 バラと永遠の約束の別視点。 イラストは9071・昇太・coco・髑髏くん・uribによるもの。 歌詞 (ピアプロより転載) 窓を見れば僕があげた 真赤なバラ一輪 愛を誓う永遠の証 萎れていく そっと・・・ 月が照らすバラが綺麗 それを貴女と重ねた 夢(まぼろし)に消える貴女は 僕があげた花の様な棘 「ずっと一緒だよ」と 接吻(くちづけ)したのは 自分への誓いなんだ・・・ 空を見ればもう茜色 また訪れる紫 星が消える朽ちて逝く それは僕らに似てる いつしか芽生えた黒薔薇 魅了されて貴女が壊れゆく 「ずっと一緒だよ」と愛し合ったよね 必ず貴女を守るよ・・・ 「ずっと一緒だよ」細い声が 薄い意識に 聞こえた バラのように赤い僕は 黒に近づき別れを告げる 誓った約束守れそうにない さよならも言えずに 瞼を閉じて「ごめんな」 思うだけで涙も流れず 「永遠(とわ)に一緒だよ」と最後に見たのは 還れぬ貴女の笑顔 コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/asagaolabo/pages/680.html
《永遠の愛を誓います》 【えいえんのあいをちかいます】 《永遠の愛を誓います》 関連リンク 獲得条件(説明) バージョン デボラを使用してプレー 19 ポップンミュージック19 TUNE STREETのネット対戦に登場した、キャラクター関連称号。 これは変えることがないだろう!的な自分のマイキャラを使っているなら、この称号はピッタリ。 関連リンク デボラ 称号/ポップン19 ネット対戦全般/ポップン19
https://w.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/431.html
29 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/05/19(月) 20 37 22 ID uzRhzf52 ※※※ 冬の澄んだ星の下。 僕と姉は、じっと空を見上げる。 こほこほと咽る姉に若干の不安を抱えたまま手を差し伸べた。 「はい、しろ姉さん。お茶」 「ありがとう、クロ」 精彩を欠く笑顔は、それでも凛として美しい。 再び風邪をぶり返したらしい姉は、それでも外に出ることを望んだ。 今日は快晴。 遥か上空には、満天の星星。 絵画なんかじゃない。天然の絶景。 小さく、或は大きく。 漆黒の中に、明滅する星明かり。 何億年も昔から。 不滅の黒の中に生きた白。 それは、燃え尽きたとしても永遠なのだと僕は思う。 地上にいる綺麗な輝きを持った星。 僕はそれを見る。 今ここに在る理由―― それを思い出しながら。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 落ち着いた雰囲気の和室に、鼻歌が響いている。 陶然とした様子で痛んだ本を捲る僕の姉。 見ているものは、この間発掘したアルバムだ。 『弖爾乎波』と書かれた掛け軸を背に、姉の表情は明るい。 「ふふふ。この時のクロ、可愛かったなぁ・・・。お姉ちゃん、お姉ちゃんて、抱きついてきて」 「・・・その時抱きついてきたのって、しろ姉さんの方じゃないか」 「この時は、お姉ちゃん、あ~んして、って、ねだって来たのよね」 「無理矢理食べろって云ったのはしろ姉さんじゃ・・・」 「クロ、煩いわよ」 「・・・・・」 一睨みされて僕は黙る。 写真の過去は同一なのに、記憶には大きな差があるようだ。 「ふふ。この時は一晩中、私の傍を離れなかったのよね」 にこ~、と笑いながら、昔の僕を見ている。 姉はアルバムが好きだ。 過去を眺めて身を捩っている事が多い。 本人に云わせると温故知新であるらしいのだが、僕の素人観察では、単純に過去に浸っているだけよう に思えるのだが。 (まあ、しろ姉さんが幸せなら、それで良いか) うふふ、うふふふふ、と笑う姉を見ながら、僕は立ち上がる。 「クロ?どこに往くの?」 ゆるみきった笑顔だったはずの姉が、真顔で僕を見上げている。 「いや、部屋に戻ろうかなって」 「どうして」 「いや、どうしてって・・・」 ここにいても姉はアルバムを見ているだけなのだし、僕も暇なのだし。 「部屋で本でも読もうかなって」 「なら――ここで読めば良いでしょう?私の傍を離れる理由にはならないわ」 「いや、でも」 「でも、何?」 「・・・・」 どうも本気で仰っている御様子。 僕は「判ったよ」と頷いた。 勿論、抵抗が無駄だと「判った」のである。 「すぐに戻ってくるのよ?良い本が見つからないなら、私の持ってる本を読めば良い」 30 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/05/19(月) 20 39 52 ID uzRhzf52 そう云ってゆるんだ笑顔に戻る。 「この頃からクロは、私無しじゃ何もできなかったんだから」 ふふふふふふ・・・。 クネクネと動いている。 (仕方ない) 僕はため息を吐きながら廊下を進んだ。 見慣れた扉の前へ来て、自分の空間への入り口を開く。 「あ、クロくん。おかえりなさい」 「・・・・・」 扉を閉める。 今、“向こう側”に誰かいたぞ? 柔らかい雰囲気の、凄い美人でえっちな体つきのお姉さんが。 (いや。まさかな・・・) もう一度扉を開いた。 「・・・・・」 いる。 笑顔でベッドに腰掛けている人がいる。 「クロくん?どうしたんですか?」 どうしたって。 「それ、僕の科白です。甘粕先輩」 そう、甘粕櫻子。 昔馴染みの、綺麗なお姉さん。 それが、鳴尾家の一室にいる。 「また他人行儀な呼び方するんですね」 プクっと頬を膨らませるこの人の心の内は、正直まるで読めない。 僕は首を振りながら、部屋に入ると、素直に疑問を口にする。 「どうして僕の部屋にいるんですか?」 「クロくんの部屋に来たから、クロくんの部屋にいるんですよ?」 のらりくらりと。 この人は相変わらずのようだ。 「いえ、目的を聞いているんですけど」 「むう」 先輩は唇を尖らせる。どうやら拗ねているらしい。 「クロくん酷いですよ。私がここに来た理由なんて、愛弟に逢いに来たから、に決まってるじゃないで すか。私、クロくんのこと、大好きなんですよ?」 「・・・・」 (ストレートに云うなぁ) 頭に血がのぼるのがわかった。 「ふふふ。クロくん、お顔、まっかですよ?」 嬉しそうにニコ目が笑う。 絶対判っていてやっているのだ、この人は。 気恥ずかしさから、僕はそっぽを向いた。 その瞬間―― 「え」 身体が宙に浮き、景色が廻った。 (投げられた!?) 状況を理解した時はすでに、僕の身体はベッドに着地していた。 「はい。捕まえました」 仰向けになった僕の上に、柔らかくて良い匂いのする体が乗っかっている。彼女の両手が、僕の身体に 添えられていた。 「あ、甘粕先輩、何するんですか」 「ですから、捕まえたんですよ?クロくんは櫻子お姉ちゃんのものですよ?」 「・・・・」 ですよ?って・・・。 本当に子供っぽい悪戯が好きな人だ。 「どいて下さい」 「どくほうが良いですか?」 31 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/05/19(月) 20 41 57 ID uzRhzf52 「当然で、」 むにゅりと。 大きな“何か”が言葉紡ぐ事を妨害する。 普段は『たゆん』で『ぷるん』と動いている“それ”が僕の胸板の上で歪に撓んでいた。 「・・・う・・・・」 「クロくん、静かになりましたね?嬉しいんですか?」 シャンプーの香が鼻孔を擽る。 嗅覚と視覚と触覚が甘粕先輩で占められる。 「ど、どいて下さい」 「嫌です」 小首を傾げて可愛く云われた。 (駄目だ) 僕も男なのだ。 これ以上は血が溜まってしまう。 頭に上った血が、下半身に集合してしまう。 (申し訳ないが、力ずくでどいて貰おう) そう思ったのだが、 「あ、あれ?」 「どうしました?」 「いや、あの、身体が――」 動かない。 そう云おうとして、思い当たった。 動かないのではなく、動けないのだと。 今僕の上に圧し掛かっている美人さんは、古流柔術の達人でもあったのだ。 「・・・甘粕先輩」 「櫻子お姉ちゃんですよ?」 「いや、あの、僕のこと、押さえつけてます?」 「捕まえたって、云ったじゃないですか」 その割には、全然痛くないのだが。 僕の胸中を察したのだろう。先輩は“笑顔で笑う”。 「一応、奥許し間近の身分ですからね。痛くしない押さえ方も覚えてますよ?逆に、必要以上に痛くす ることも出来ますけど」 やってみますか? 等と気軽に云ってくれる。 「本当に痛そうなので、勘弁して下さい」 「本当に痛いですよ?押さえたときに警戒するのは、含み針とかの暗器ですから。それをさせないため の激痛なんですよ」 でもまあ、 「イタイのよりも、キモチイイほうがクロくんも良いですよね?」 「い、いや、あの・・・」 大きくて柔らかい何かが擦り付けられて、むにむにと形を変えた。 本当に気持ち良い。 「クロくん」 「な、何ですか?」 「本当に襲っても――良いですか?」 「な、」 そんなの、駄目に決まってる。 僕はぶんぶんと首を振った。 「だ、駄目です!離れて下さい」 「でも、私も“その気”になってきちゃったんですよ。冗談のつもりだったんですけど」 間近にある先輩の顔が赤い。 これは照れか。 それとも。 (まずい・・・) 色色な意味で、この人には抵抗できそうも無い。 けれど抵抗に失敗すると、その後も。その先も。 きっと大変なことになる。 「優しくしたほうが良いですか?乱暴にしたほうが良いですか?」 「や、止めてくれるほうが良いです」 32 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/05/19(月) 20 44 16 ID uzRhzf52 「それは、め、ですよ?」 ニコ目が眠り目になって、顔が近づいて来る。 僕は精一杯もがくが、身動ぎ出来ない。 その時。 「クロ、まだ本は決まらないの?」 凛とした声と、ノック音が響いた。 痺れを切らした姉がやってきたのだ。 「し、しろ姉さん!」 (そうだ、しろ姉さんに助けを呼べば――) 「駄目ですよ?」 上に乗っかっている誰かが、耳元に唇を寄せる。 「鳴尾さんを中にいれちゃ、駄目です。クロくんだって、“こんな姿”を鳴尾さんには見せられないで しょう?」 「う・・・」 「そう。良い子ですね」 頬に口付けされる。 「クロ、返事しなさい?聞いているの?」 「クロくん。あの人を追い払って下さい。そうしたら、“ご褒美”をあげますよ?」 「い、いらないです、ご褒美なんて」 「じゃあ、“お仕置き”が良いんですね?」 くすくすと笑う。 こんな状況なのに、明らかに楽しんでいる。 「クロ、聞こえてるんでしょう?開けるわよ?」 「さあ、クロくん、追い払うんですよ?」 「し、しろ姉さん!」 僕は大きな声を出した。 「クロ、聞こえているのなら、返事は早くしなさい」 「う、うん。ごめん。す、すぐに往くから、部屋で待ってって」 「すぐにイクんですか、クロくんは?」 駄目だ、この人、サドだ。 「・・・・」 扉の向こうは沈黙。 気配は残っているので、立ち去ってはいないようだが。 「クロ」 「な、何?」 「判ったわ」 その声と共に、歩く音が遠ざかる。 「うぅ・・・」 僕は良くない選択をしてしまったのではないだろうか? それこそ深みに嵌るような。 けれど先輩は上機嫌に笑う。 「くすくす。上手くいきましたね?じゃあ、続きをしましょう?」 そう云って再び顔を近づける。 刹那。 ドカン! と。 凄まじい音が響き、何かが吹き飛んでいた。 それは、僕の部屋の扉だった。 長方形にあいた穴の向こうに姉がいる。 どうやらドアを蹴り破ったらしい。 (離れたの、助走をつける為か・・・) 「あらあら。乱暴ですね」 「・・・・・」 肉親はじっと僕らを見つめている。 姉の表情に変化は無い。 33 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/05/19(月) 20 46 49 ID uzRhzf52 けれど、いつも一緒にいる僕には判る。 怒っている。 姉は間違いなく、怒っている。 「甘粕」 姉が口を開き。 「こんにちは。鳴尾さん」 僕を組み倒したままの誰かが、柔らかく笑う。 「何をしている?」 「ナニをしています」 ブン、と突風が僕の頭上を吹き抜ける。 それは姉の放った突きであった。 恐ろしく速く、力強い。 けれど僕を押さえつけていた人は、ベッドに手を着いて回転し、ひらりと身をかわしていた。 「ん~。残念ですね。鳴尾さんにバレちゃいましたか。今日はここまでですね」 着地した甘粕櫻子は出口を背負う。 それは、いつでも逃亡可能な立ち居地だ。 「力づくって嫌いじゃないんですけどね。いくら私でも、鳴尾さん相手では荷が重いです。それにして も、よくドアを蹴破ろうなんて思いましたね」 「・・・クロに何かあったことは声で判った。この子が困るような事態が起きているなら、可能性は限 られる」 「流石お姉さんですね。でも、ドアに鍵は掛かって無かったですよ?」 「云いたいことは、それだけか?」 すうっと。 姉の瞳が細くなる。 「元からクロくんに逢いに来たわけですし、鳴尾さんには云う事なんて無いですよ」 くすくす笑う先輩に。 姉は予備動作の無い蹴りを放つ。しかし見切っていたのか、先輩は後方に跳躍していた。 「もう。だから私じゃ鳴尾さんには適いませんって。弱いもの虐めは駄目ですよ?」 「虐めではない。害獣駆除だ」 「にゃ~ん」 再びの攻撃と、再びの回避。 速すぎて目が追いつかない。 (しろ姉さんの拳足をあっさりかわせる人、はじめて見た) 充分な距離をとって、先輩は肩を竦める。 「クロくんになら叩かれても良いんですけど、それ以外は嫌なので今日は帰ります」 のんびりとした口調だった。 背を向け、廊下に出ても、姉は追わない。 この人を相手に深追いすることの危険性を知悉しているからだ。 「クロくん、今回はここまでですね」 先輩は芝居がかった所作で振り返り。 ちゅっ。 そんな音と共に、投げキスが放たれる。 けれど僕の身体は、すぐ傍にいる肉親に引っ張られた。 キスの軌道上から姉の腕の中へと保護されたのだ。 「むぅ」 甘粕先輩は眉を逆立てる。 「今のは少し、腹が立ちました」 「・・・・」 姉は黙したまま。 僕を後ろに、構えなおす。 一方の甘粕櫻子は首を振った。 「弱いって不利ですね。思う通りに振舞えません」 もう帰ります。 振り返ろうとして。 「あ、そうだ、鳴尾さん」 動きを止めて、顎に指を当てる。 「鳴尾さん、どこか体調でも崩してますか?凄く弱弱しい動きでしたけど?」 (え――) あの動きで? 34 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/05/19(月) 20 49 00 ID uzRhzf52 僕は姉を見た。彼女は答えず、じっと構えをとっている。 「まあ、どっちでもいいですね。じゃあクロくん。また逢いに来ますね?その時、続きをしましょ?」 ひらひらを手を振って、今度こそ本当に立ち去った。 けれど実姉は構えを解かない。 凛とした後姿まま。 僕はそこに声を出す。 「しろ姉さん、身体、まだ悪いの?」 「クロ」 姉はこちらを向かぬまま、実弟の言葉を遮った。 「今すぐお風呂入って来なさい」 「え?」 「お風呂。穢されたでしょう?すぐに入りなさい」 「いや、穢されたって・・・。それよりも、身体平気な、」 「早く往きなさい。事情はその時に聞かせて貰うから。私はこの部屋の掃除をしておくわ」 静かな瞳が僕を捉える。 「・・・・・・」 余計なことは云わない方が良い。 僕はそう判断して頷いた。 部屋を出るときに、一瞬だけ振り返る。 具合が悪い様子は、特に感じられなかった。 ※※※ 風呂から上がり、冷蔵庫の前に来た僕は、そこで「不審人物の進入を許した」母にお説教をしている姉 を見つけた。 甘粕櫻子は御丁寧に、僕の母に御機嫌伺いをしてから部屋に上ったらしい。その事が、殊更姉の怒りに 火を注いだようだった。 触らぬ神に何とやら。 口を挿む気は更更無い。 牛乳なり水なりを飲んで部屋に戻ろうと冷蔵庫を開けただけだ。 けれど。 保冷庫を覗いた僕は、そこで余計な疑問を口にしてしまったのだった。 「プリンがないけど、もう食べたの?」 云い終わるか終わらないか。 3つ上の肉親が、冷蔵庫の中を凝視していた。 「な、なんでないのよ・・・」 ぽっかりと空いたスペース。 其処には朝まで確かに、姉のお気に入りの焼きプリンが入っていたはずだった。 わなわなと震える姉は母を睨み。 ガクガクと震える母は、引きつった顔をする。 「わ、私じゃないわよ。至路のお友だちの・・・・甘粕さん?彼女が食べてたのよ?」 「何故害獣に餌を与えるの?」 そう問う姉の顔には、青筋が浮かんでいる。 冷静さを装うという、努力を放棄した姿だった。 「く、来路、何とかしなさい・・・!!」 母の瞳は息子にそう呼びかける。 けれど僕は首を振った。 ゼリーとかケーキとかフルーツならば兎も角、プリンとなれば手に負えない。 僕は母を捨て殺しにして部屋へ戻った。 数十分ぶりに見る我が部屋は、随分と風通しが良くなっている。 扉が無いのだから当たり前だが、ベッドの上にマットレスも無い。 替わりにあるのは、姉の使用している和蒲団だった。 (シュールな光景だ・・・) 室内には、仄かにアルコールの匂いが香る。 多分、消毒用のアルコール製剤を姉が噴霧したのであろう。 彼女にとって、ニコ目の美人さんは「害獣」であり、「黴菌」なのである。 「・・・・マットレスも捨てられたんだろうなぁ」 甘粕櫻子が“手を着いた”寝具である。 姉が残そうはずも無い。 35 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/05/19(月) 20 51 31 ID uzRhzf52 僕はベッドの上にある和蒲団に腰掛ける。 すると、タイミングを見計らっていたかのように、携帯電話が振動した。名は、甘粕櫻子とある。 「こんにちは、クロくん」 受話器越しの柔らかい声。 さっきまで聞いていた、騒ぎの張本人。 彼女に間違い。 「甘粕先輩」 「はい。櫻子お姉ちゃんですよ。今、大丈夫ですよね?」 「え?大丈夫って・・・?」 「鳴尾さん、其処に居ないでしょう?」 「!」 驚いた。 「何でしろ姉さんがここに居ないと?」 「“その為”に、プリンを食べました」 「・・・・」 どうも計算ずくであったらしい。 甘粕櫻子は一つの行動を一つの目的の為だけにしない人だ。 この間の携帯電話も然り。 『今』が『次』に繋がっている。 「鳴尾さん、クロくんのお母さんを叱っていると思うんですが、どうですか?」 「総て先輩の掌の上です」 「ふふふ。そうですか」 顔は見えない。 だけど向こう側では、“笑顔で笑う”女性の姿が容易に想像出来た。 「――で先輩、一体どうしたんですか?」 「いえいえ。さっきはきちんとお話できませんでしたからね。クロくんの声が聞きたかったんです」 「・・・そりゃ、ろくろく話もしないで、押し倒されただけでしたからね」 「あれはクロくんがいけないんですよ?お姉ちゃんを誘惑するから、ああなっちゃったんです」 クロくんは悪い子さんですね。 本気とも冗談ともとれる態で、甘粕櫻子は云った。 「・・・・・」 僕は一一反駁しない。 何を云っても無駄だと判断したから。 この人は、僕をからかいたいだけなのだ。 「兎に角、もう押し倒すのは止めて下さいね?」 「私、クロくんのお姉ちゃんですので」 「・・・どんな理論か拝聴しましょう」 「簡単ですよ。――クロくんが本当に望むことなら、全力で応援しますし、クロくんが本当に嫌がるの なら、絶対にそれはしません」 「僕、離れてくださいって云いませんでしたっけ?」 「私のおっぱい、嫌いですか?」 「――」 言葉に詰まる。 あの感触を思い出して、顔が赤くなった。 甘粕櫻子は、そんな僕の様子を把握したらしい。受話器の向こうから、ふふふと柔らかい声が響いた。 「それで答えは充分です」 「いや、何も云ってません」 「はい。云えませんでしたね」 「う・・・」 「可愛いですよ、クロくん」 「からかわないで下さい」 「云いませんでしたっけ?私、クロくんのこと、可愛がるのも、いぢめるのも大好きなんですよ?」 「・・・・」 僕は頭を抱える。 振り回されるほうは、たまったものではない。 「でも、しろ姉さんを怒らせるのは勘弁して下さい」 「それは結果です。私、鳴尾さんの存在は度外視していますから」 「結果が出てるから、お願いしてるんですが」 「クロくん、鳴尾さんに懐きすぎです。お姉ちゃん、いじけますよ?」 36 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/05/19(月) 20 53 59 ID uzRhzf52 「いや、あの・・・」 「冗談ですよ。――ねえ、クロくん」 「はい」 「Euclase・・・ってお店、知っていますか?」 「Euclase?」 聞いたことがある。 繁華街にある、人気店。 パンとケーキの販売をしている、カフェでもある場所。 洋菓子にはさほど興味が無いので、あまり近づかない場所だ。 「あそこ、パンとケーキばかりが有名なんですけど、プリンも美味しいんですよ?」 「プリン?・・・・あ」 「鳴尾さんの機嫌、直るといいですね」 「ありがとうございます。でも、どうして」 「云いましたよね?私、クロくんが本当に望むことなら、応援するって」 「・・・・・」 「この先何があっても、私はクロくんの味方です。鳴尾さんが怒るようなことがあっても、それだけは 変わりません」 受話器の向こう。 其処は見えない。 だから、姉を自称するこの人が。 どんな顔で。 どんな仕種で。そう云ったのかは判らなかった。 だけど、僕の耳に届く柔らかい声は、とても優しかった。 ※※※ コホコホと。 僕の横では、小さく咽る姉の姿がある。 それは、“此処”が寒いからではないだろう。 風邪―― 以前臥していた病気を再発させた為だった。 『Euclase』 甘粕櫻子に紹介されて訪れた店。 そこには、広いカフェがある。 冬だというのに、客の多くが屋外カフェで寛いでいた。 「星を観に往きましょう?」 そこで空を見上げた姉は、僕にそう云った。 冬の空は高い。 丘に上がれば、きっと綺麗な星空が見える。 僕に断る理由は無い。 だけど。 「しろ姉さん、本当に大丈夫?」 「ええ。何も問題ないわ」 道中が寒かったせいか。 『Euclase』から戻る頃には、姉の体調が悪化していた。 顔色が優れず、微熱があるようだった。 それでも大したことは無いからと、星を観に外へ出る。 普段は、僕が体調を悪くすると、それだけで外出を禁ずる姉が、自分のことになると途端にこれだ。 医者の不養生じゃあるまいしと、僕は宥めた。 けれど、結局押し切られるような形で、街の外れにある丘に上った。 「はい、しろ姉さん。お茶」 「ありがとう、クロ」 精彩を欠く笑顔は、それでも凛として美しい。 「でもしろ姉さん、無茶は駄目だよ?家に帰ったら、すぐに蒲団に入ってね?」 「判ってる。けど、クロ、今はそんな無粋なことは云わないの」 姉は背後から僕を抱きしめる。 とても暖かい。 そのままの姿勢で、僕らは空を見上げた。 永遠の白を煌かせる不滅の黒。 37 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/05/19(月) 20 56 23 ID uzRhzf52 二色のみが存在する、荘厳なる銀河の暗黒。 世界を覆う、無限の空。 黒いキャンバスには白のみが存在し、天然の名画は世界そのものを包み込む。 唯、其処にある。 それだけで美しい。 技巧も、意匠も無い。 在るように、在るだけだ。 「綺麗ね」 「うん」 ぎゅうっと。 姉は僕を抱く手を強めた。 この人も―― この空と同じ。 在るだけで美しい。 “そういうもの”を、僕はふたつしか知らない。 ひとつは僕を抱く姉。 そしてもうひとつは、記憶の遥か彼方に。 子供の頃、外国人に逢ったことがある。 幼稚園に入る前か、入った頃か。 少なくとも、総てが霞む、不確かな記憶の向こうの物語。 “それ”がどんな人で、どんな状態で、何を話したか。 まるで覚えてはいない。 顔も、性別も、大まかな年齢すらも。 だけど、誰よりも、何よりも綺麗な、碧(あお)い瞳だけは記憶に残った。 あれほど綺麗な瞳は見たことが無い。 今までも、そしてこれからも。 “その人”とは、二度と逢うことはなかったし、これからも逢わないだろう。 だから、“それ”はすでに終わった碧。 終焉の碧。 だけど、記憶にはずっと残る。 多分、この夜も。 「クロ」 「うん?」 「来年もまた、こうやって星を観ましょう?」 「うん」 「絶対よ?再来年も、その次も、ずっと、ずっと一緒にここへ来るの」 「うん・・・」 姉は戒めを解き、僕の横に並ぶ。 綺麗だ、と思う。 星空も。彼女も。 僕は天を仰いだ。 五代絵里は綺麗な景色は心が震えると云ったけれど、満たされることもあると感じた。 空を見ているだけで口元が自然に綻んだ。 すぐ傍にいる肉親は、果たしてどのような表情をしているのだろうか。 いつものような凛とした顔か。 それとも、穏やかな微笑だろうか。 僕は地上に目を戻す。 横に居る姉は。けれど空を見上げてはいなかった。 身を屈め。 背を丸めていた。 咳をしているようだった。
https://w.atwiki.jp/rdg2006/pages/15.html
スピッツ ロビンソン
https://w.atwiki.jp/yurina0106/pages/4326.html
タグ 感動 曲名え DAMにて配信中 歌 いとうかなこ 作詞 吉野麻希 作曲 溝口和彦 作品 STEINS;GATE 比翼恋理のだーりんED PSPソフト「STEINS;GATE」OPテーマ「宇宙エンジニア」&Xbox 360ソフト「STEINS;GATE 比翼恋理のだーりん」EDテーマ「永遠のベクトル」
https://w.atwiki.jp/mekong/pages/138.html
永遠のジャック ベティ (講談社文庫) 清水義範 講談社 (1991/09) 日本で英語教育を受けた人なら楽しめる。
https://w.atwiki.jp/animerowa/pages/436.html
永遠の炎 ◆q/26xrKjWg ヴィータが死んだ。 昔――もう思い出せないほど遙か昔から、常に共にあった仲間。 そして、道を違えた敵。 どのような形であろうとも、違えた道が交わることは、もう、ない。 ヴィータから奪ったデイパックに入っていた、濡れた彼女の服。はやてが自分達にと与えてくれたものだ。 騎士甲冑と同じように。あるいは、もっと大切な何かと同じように。 何の因果か、それが今は自分の手元にある。 (死力を尽くさねばならない敵が一人減った。ただそれだけのことだ) そんな思いとは裏腹に、服を握りしめる拳に力が入る。 濡れた服から雫が垂れた。 ヴィータが死んだということは、レヴァンティンを振るうヴィータすらも屠った猛者がいるということでもある。 そんな相手と正面切って戦うことになれば、確実に勝てるとはとても言い切れない。 生き残るためには、自分の持ち手を慎重に使っていく必要がある。 近接戦闘で用いる斧が一本。 遠距離からの狙撃を可能にする弓矢。矢は残り二十本。 銃が二丁。引き金を引くだけの力で人を殺し得る兵器。扱いに長けていなくとも、いざとなれば弾を当てる術はいくらでもある。 奇襲にも撤退にも使えるスタングレネードが四個。 切り札たるペンダント。カートリッジ一発分の魔力を有する。 そして、全ての戦術の要となるクラールヴィント。 今まで自分達が何の気兼ねもなく戦うことに集中していられたのは、シャマルの支援があったからこそだ――それをこの戦いの中で改めて思い知った。 対象の位置を把握する。 姿を隠す。 通信を傍受、あるいは阻害する。 傷を治療する。 クラールヴィントは多くのことを賄える。とはいえ、自分が使えばシャマルほどの効果は期待できないが。空間制御に至っては扱うことすら難しい。旅の鏡のような高度な術式は望むべくもない。 それでもなお、極めて有用なものであることには違いない。これからも最大限に活用していかねばならない。 索敵の感度と範囲とを増して、周囲の様子を窺う。 やはり生命反応はない――が、代わりにそれとは異なる何かに気付いた。魔力の反応ではない。反応がないわけでもない。ただ一点、反応がないという結果すらもないのだ。 幸い、電車の出発までにはまだ時間の余裕がある。 備えを少しでも充実させられる可能性があるならば、調査しておくのもいいだろう。先程のペンダントのような思わぬ収穫があれば儲けものだ。 (少し早いが……出るか) そして、シグナムは立ち上がった。 ヴィータの服をその場に残して。 ほど近い場所にあったビル――であったもの。 それを瓦礫の山に変えたのは何なのか、もう窺い知ることはできない。あまりに時が経ちすぎている。 奥にそびえる鉄柱が二本。 鉄柱の下には、人一人”分”の屍。 少なくとも、これは自分とは違う生き方を選んだ人物だ。 何者かが瓦礫を掘り返し、屍を見付けだし、埋葬し、墓碑代わりの鉄柱を立てた。ただの殺人者がこのように弔われることなどあるはずがない。 一方でその何者かも、ここまで瓦礫を掘り返しておきながら、屍を押しやってまで他の何かを探そうとはしなかった。 やはり自分とは違う。 今の自分は、必要とあらば何だってできる。人殺しだろうが、死体漁りだろうが、墓暴きだろうが。 埋められていたのはただの肉塊ではない。むしろ、肉と呼べるようなものはほとんどないと言っていい。赤い液体を滴らせる金属や繊維の塊を、何の感情も抱かずに脇へと避けていく。 屍のさらに下。 瓦礫をいくつか取り除いて、ようやっとそれらを見付けた。 奇怪な形の短刀と、デイパックが一つ。 (原因はこの短刀だな) ビルの倒壊に巻き込まれて無事だったことを考えれば、相当頑丈な代物ではある。いくら頑丈だとはいえ、どう見ても斬り合いには向かない形状だが。 この短刀が、魔法による探知そのものを完全に無効化している。故に結果すらない。 所謂ロストロギアのような、不可知の道具なのだろう。それも、AMF――アンチマギリンクフィールドと同質の何かを局所的に発生させる機能を有した。 この特殊な効果には何かしらの使い道がある。 とりあえず自分のデイパックに放り込んでおく。 続けて、血を吸って変色したデイパックに手を突っ込む。 まず出てきたのは、二つの真っ新なデイパック。 どちらも中身は大して役に立ちそうにもないがらくたばかりだ。それらは脇に捨て置いて、さらに中を漁る。 (これは――) 上等な拵えの柄に、すらりと伸びる鞘が現れた。またも日本刀である。 さすがに呑気に真贋を確かめているほどの時間はない。 持っていく価値がありそうなのはこのデイパックだけだ。それがよりにもよってどす黒く血に染まったデイパックだというのは、何とも自分にはお似合いの話ではある。 シャワーで洗い流したばかりの両手も、すっかり血で汚れてしまった。 大したことではない。 既に己が両手は業にまみれている。血の汚れなど、気にすることはない。 車内は閑散としていた。無論、乗客が自分一人だけだからというのが一番の理由だが、それだけが理由だというわけでもなかった。 妙に真新しい内装からは、人々の生活というものが全く感じられない。 スピーカーからは耳障りな放送がだだ漏れている。 聞かずに済むなら済ませたいものだが、そういうわけにもいかない。さりげなく重要な情報を流している。 『本列車は侵入禁止区域を通過する事があるギガガ~本車両内に限り皆様の安全を約束するギガ~』 参加者の自爆死ではなく殺し合いをこそ望むギガゾンビにとって、こんなことで嘘を吐いて首輪の爆破を誘発させても何ら面白くはあるまい。信用して問題ないだろう。 第二回放送を聞き逃している以上、この先にあるかもしれない禁止エリアの存在を無視できるのは有り難い。 そのままシグナムは腰を落とした。 座席ではなく、床の隅に。 座席に座って外から丸見えというのは、あまりに間の抜けた話だ。電車に乗っていることを誰かに気取られでもしたら、無駄に危険を抱え込むことになる。 そして、わずか数分の電車の旅が始まった。 鈍行をも下回る速度で、電車はのんびりと進んでいるようだ。周囲が田園風景ならばともかくとして、このような殺伐とした場所にはあまりに不似合いではある。 目を閉じ、周囲の気配を探りながら、そんなことを考えていた。 唐突に悪寒が走る。 シグナムは目を見開いた。 何者かの殺気、あるいは魔力を感じたわけではない。わざわざ傍受するまでもなく、クラールヴィントを通して流れ込んでくる情報の嵐。 その内容を即座に理解することはできない。が、意図を察することぐらいはできる。 (禁止エリアか!) 首輪に警告を与え、そして警告の後に爆破させるための通信。 にも関わらず、首輪が警告を発する気配はない。車内放送で言っていた通り、電車の中は安全なようだ。 出発してからの時間から察するに、今はちょうどE-4のあたりだろう。 もしクラールヴィントがなければ、自分が禁止エリアに突入したと気付くことすらできなかった―― (……何故だ?) 電車の外壁が通信を遮断しているわけではない。クラールヴィントに伝わっているのと同様に、この首輪にも伝わっているはずだ。 なのに首輪は警告を発しない。突然爆発することもない。 首輪の爆弾や禁止エリア自体がブラフだったのか。 この殺し合いが始まるその時に、二人の人間が爆死させられたのをこの目で見た。たまたまギガゾンビに楯突いた二人の首輪にだけ、たまたま本当に爆弾が付けられていた――それではあまりに都合が良すぎる。 禁止エリアに留まって爆死した者が出たと、先の放送にもあった。実際に何かしら仕掛けてきている以上、禁止エリアは有効だと見るべきだ。 それらを勘案すれば、ブラフの可能性は捨てざるを得ない。 では、どうして電車の中にいれば安全なのか? 加えて、先程手に入れたばかりの短刀を思い出す。クラールヴィントによる探知を一切合切無効化していた短刀。 そのようなものを支給品として参加者に配るぐらいだ。普通に考えれば、禁止エリアでの探知を同じように無効化しない手はない。この通信に対して逆探知をされて、出元を暴かれるような危険性を残す理由がない。 探知しても無駄だとタカを括っているのだろうか。 それとも、わざと探知させているのだろうか。 あるいは―― ――そこで、情報の嵐が途切れた。 E-4を抜けたのだろう。 ふと湧いた疑問に少しだけ熱くなっていた好奇心が、急激に醒めていくのを感じる。 E-4が第二回放送で聞き逃した禁止エリアのうちの一つである。 電車の中にさえいれば禁止エリアの影響は受けない。 重要なのは、たった二つの事実だけ。それ以外のことについてどれだけ考えようとも、今の自分にとってはもう無意味なことだ。 故に、シグナムは考えるのを止めた。 電車は予定通りにE-6の駅へと到着した。 ホームには薬莢が散らばっているが、それはもう過ぎ去った台風の跡だ。駅の構内およびその周辺にかけて、誰もいないことを既に確認している。 予想していたように、F-1の駅とほぼ同じ構造になっている。待ち伏せに使うのも悪くないだろう。 急いて事をし損じてはならない。 十分に状況を吟味して、それから駅を出るか待ち伏せるかを決めればいい。 ビルの倒壊現場で入手した刀を、今度はデイパックから完全に取り出した。 その抜き身を空気に晒し、じっくりと眺める。 幾分小振りの刀で、本来の使い手の体格と太刀筋に合わせてあるようだ。自分にとっては少々物足りないが、それでも実戦で使い込まれてきた風格は確かなものであろう。真贋で言えば、間違いなく真に当たる。 ――と。 足下に一枚の紙が舞い降りた。 刀をデイパックから引き抜いた際に、一緒に出てきたもののようだ。ひとまず刀は鞘に収め、その紙を拾う。 ――獅堂光の剣:獅堂光以外の”人”が触れたら対象を燃やす―― そう書かれている。 刀ではなく、剣と。 デイパックの中を覗き込むと、確かにもう一本、剣の柄らしきものが見える。 刀の存在だけを確認してこのデイパックを選んだが、これは嬉しい誤算だ。その特殊な仕様から鑑みるに、魔法に類する品である可能性が高い。 幸か不幸か、シグナムは”人”ではない。 死ねば何も残らない。 この地に数多く晒されているような屍すら。あるいは誰の記憶にさえも。 (高町なのは、それにテスタロッサは――) たとえ二人がまだ生きていたとしても、二人が自分のことを記憶に残すはずがない。 死ぬ人間は記憶を残せないのだから。 二人とも死ぬのだ。殺されて。それが誰かの手によるものか、我が手によるものか。その程度の違いでしかない。 互いに好敵手と認め合ったフェイトとの決着も、もう果たされることはないだろう。偶然相見えることがあったとしても、真っ当な決闘とはいくまい。 殺せるならば確実に殺す。 己の身に危険が及ぶ前に逃げる。 自分に許されているのは、そんな戦い方だけだ。 ともあれ、死を超えて存在し続ける心などというものは有り得ない。 もしそれが実在するのであれば―― (……私の前に、ヴィータが立ち塞がったはずだ。何度でも) ――はやての心が、死を超えてなおここにあると証明するために。 もはや恐れるものなど何もない。何人たりとも己の信念を覆すことはできない。 唯一人、それを為し得たかもしれなかったヴィータは、もういないのだから。 はやての心が死によって失われたように、ヴィータの心もまた死によって失われた。死ねば何も残らない。意志は継がれず、ただ消えてゆく。皮肉なことに、ヴィータ自身の死によってそれは確かなこととなった。 なれば、あとは己の信念を貫き通すのみ。 必ず生き残る。最後の一人として。 「……剣よ。私は”人”か? それとも”人”あらざるものか?」 全ての想いを振り払って――振り払った気になって、抱え込んで――剣の柄を掴む。 そして一気に引き抜いた。 真っ赤な柄に、複雑な形状の鍔。長大な両刃の刀身。 燃やされることはない――いや、燃えるような何かだけは、確かに伝わってくる。 アームドデバイスではない。デバイスのような魔法補助装置ですらない。 匠の技で鍛え上げられ、実戦を潜り抜けてきた業物とも違う。 では何なのか。 これは、純然たる炎の意志だ。 炎の魔剣レヴァンティンに勝るとも劣らない一振り。己が炎の魔力を全て受け止められるだけの器だと確信する。 「そう、私は”人”あらざるものだ。ならば私は、一体何だ?」 剣は答えない。 身を焦がすほどの烈火を内に秘め、その刃に鈍い輝きを湛えるだけである。 【E-6/駅/夜】 【シグナム@魔法少女リリカルなのはA's】 [状態]:ほぼ全快/騎士甲冑装備 [装備]:獅堂光の剣@魔法騎士レイアース クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはA's 鳳凰寺風の弓@魔法騎士レイアース(矢20本) コルトガバメント(残弾7/7) 凛のペンダント(残り魔力カートリッジ一発分)@Fate/stay night [道具]:支給品一式×3(食料一食分消費)、スタングレネード×4 ルルゥの斧@BLOOD+、ルールブレイカー@Fate/stay night トウカの日本刀@うたわれるもの ソード・カトラス@BLACK LAGOON(残弾6/15) [思考・状況] 1 :様子を見て、駅を出るか待ち伏せるかを決める。 2 :無理をせず、殺せる時に殺せる者を確実に殺す。 基本:自分の安全=生き残ることを最優先。 最終:優勝して願いを叶える。 [備考] ※放送で告げられた通り八神はやては死亡している、と判断しています。 ただし「ギガゾンビが騎士と主との繋がりを断ち、騎士を独立させている」 という説はあくまでシグナムの推測です。真相は不明。 ※第二回放送を聞き逃しました(禁止エリアE-4については把握)。 ※シグナムは『”人”ではない』ので、獅堂光の剣を持っても燃えません。 【F-1/ビル倒壊現場】アイテム状況 ※以下については、シグナムに回収されました。 素子のデイパック(支給品一式、トウカの日本刀@うたわれるもの、獅堂光の剣@魔法騎士レイアース ) ルールブレイカー@Fate/stay night ※以下については、役に立たないと判断されてその場に残されています。 ルイズのデイパック(支給品一式、水鉄砲@ひぐらしのなく頃に、もぐらてぶくろ@ドラえもん、バニーガールスーツ@涼宮ハルヒの憂鬱) 士郎のデイパック(支給品一式、瞬間乾燥ドライヤー@ドラえもん) ※以下については、シグナムには発見されませんでした。 ジュンのデイパック(支給品一式) ベレッタ90-Two、物干し竿、ベレッタM92F型モデルガン 弓矢(矢10本)@うたわれるもの、オボロの刀(1本)@うたわれるもの 時系列順で読む Back 苦労人 Next WHEN THEY CRY 投下順で読む Back 苦労人 Next WHEN THEY CRY 199 時は戻せなくても シグナム 228 ここがいわゆる正念場(前編)
https://w.atwiki.jp/gundamwarnexa/pages/1447.html
ギリ・ガデューカ・アスピス [部分編集] 第3弾 / ベストセレクション第2弾 CHARACTER 03B/CH BK022R 3-黒1 (○常駐):このカードは、「特徴:死の旋風隊」を持つユニットにセットされている場合、「[黒1]:共有[死の旋風隊]」を得る。 (自軍ダメージ判定ステップ)[X]:このカードが戦闘エリアにいる場合、敵軍ユニット1枚の上に-1/-1/-1コインX個を乗せる。Xの値は、「特徴:死の旋風隊」を持つ自軍カードの枚数を上限とする。 男性 子供 NT 死の旋風隊 [3][0][1] 黒-クロスボーン 「特徴:死の旋風隊」を持つユニットにセットしていると、共有を得られる。 「特徴:死の旋風隊」を持つユニット一覧(09現在) クァバーゼ アビジョ トトゥガ クァバーゼ(MA形態) ビギナ・ギナII(木星決戦仕様) アラナ・アビジョ バーラ・トトゥガ 「特徴:死の旋風隊」を持つカード一覧(09現在)。 クァバーゼ アビジョ トトゥガ クァバーゼ(MA形態) ビギナ・ギナII(木星決戦仕様) アラナ・アビジョ バーラ・トトゥガ ギリ・ガデューカ・アスピス ローズマリー・ラズベリー バーンズ・ガーンズバック [部分編集] 第9弾 CHARACTER 09D/CH RD086R 3-赤1 ∞ (>起動):このカードが場から離れる場合、敵軍ユニット1枚に、Xダメージを与える。Xの値は、本来の記述に「特徴:死の旋風隊」を持つ自軍カードの枚数と同じとする。 (戦闘フェイズ)[0]:このカードがGである場合、自軍「ギリ・ガデューカ・アスピス」1枚と、このカードを置き換える。この記述の効果は、プレイヤー毎に、1ターンに1回のみ使用できる 男性 大人 NT 死の旋風隊 赤-クロスボーン [3][0][1] 上記と合わせてデッキにもう3枚入れられる。 商品情報より。 「特徴:死の旋風隊」を持つカード一覧(09現在)。 クァバーゼ アビジョ トトゥガ クァバーゼ(MA形態) ビギナ・ギナII(木星決戦仕様) アラナ・アビジョ バーラ・トトゥガ ギリ・ガデューカ・アスピス ローズマリー・ラズベリー バーンズ・ガーンズバック
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/42770.html
登録日:2019/09/04 Wed 21 36 20 更新日:2024/08/03 Sat 20 34 47 所要時間:約 4 分で読めます ▽タグ一覧 COMIC X-EROS COMIC快楽天BEAST COMIC快楽天裏BEAST エロ漫画家 ビッチ 原画家 漫画家 純愛 雛咲葉 雛咲(ひなさき)葉(よう)とは主にCOMIC快楽天BEAST等の18禁雑誌を中心として活動する漫画家並びに原画家。 概要 絵柄は比較的美麗な部類に入るが、ふわふわで柔らかそうという感じもある。 ヒロインの体型も肉間取スレンダーから巨乳系までスタイルは多種多様だが、ボディバランスは良好。 作風は純愛でハッピーエンドな結末が多いので、読みやすい部類に入る。 単行本では収録された作品の解説が載せられており、併せて読むとより作品が楽しめる親切設計。 純愛ものを描いてる作者であるが、極初期の作品では「ヒロインが実はビッチ」ものを描いており、 デビュー作用に最初にプロットを5本くらい担当に見せたら「全部オチが実はビッチ」というもの。 担当にビッチ好きなのかと言われて「だってビッチ面白いじゃないですか(意訳)」と会話していた。 しかし「すい~と・る~む」での作品解説によると、当時の担当に言われたのか「実はビッチオチ」も当作品で最後となった。 ゾイドシリーズやロックマンエグゼシリーズなどのホビー関係やゲームシリーズ、名探偵コナンや相棒等と言った推理物を好んでいる人物で色々とチェックしている様子。 他には魔法科高校の劣等生を愛読している。 作品一覧 単行本 いま君に恋してる 初単行本。2014年3月31日(*1)発売。 表題作である「いま君に恋してる」は会長に憧れて生徒会に入った眼鏡の男子生徒がその憧れの人と両想いになる他、 教え子に手篭めにされる新米女教師を描く「憧れ…壊想」や旦那の部下を誑し込む不貞妻「Immorality」などが収録。 純愛ものはあるが、前述のとおり「実はビッチだった」というオチがあれば、「徐々にビッチに堕ちる」という展開の内容が見られる。 とらのあな秋葉原店Aで発表された『2014年上半期 成年コミックランキング』(*2)では8位、『2014年成年コミック年間ランキング』(*3)では20位に入った。 (収録作品) ビッチなBeach おとどけ・MYはーと いま君に恋してる 憧れ…壊想 れんげさんご奉仕です Immorality すい~と・る~む めいどINチャイナ娘 夢見ごこちでつぶやいて もんもんアスリート 春華さんの保健室 恋色花火 もっと君に恋してる 好きな人ができた! 2冊目の単行本。2015年10月31日(*4)発売。 良家のお嬢様と書生の恋物語と試練を描いた「野草の唄」「野草の唄 ~桜花怒涛~」や 生粋のリケジョがイケジョに進化する「白衣の気持ち」、不良少女が年上の男性に憧れを抱きやがて…な「憧れの人」などが収録されている。 (収録作品) アンサンブルは桜色 真夏の迷い ハルとボク 憧れの人 野草の唄 野草の唄 ~桜花怒涛~ あくとONチャイナ娘 美女で野獣 白衣の気持ち 依り代の見た夢 雨ときどきネコ 雨ときどきイヌ 野草の唄 ~エピローグ~ 放課後のささやき 3冊目の単行本。2017年7月31日(*5)発売。 放課後の教室で青春を謳歌する「黄昏の闇に塗れて」をはじめ、ボクっ娘と夏祭りを楽しむ「ハルとボクの夏休み」や 「憧れの人」の前日譚にして有閑マダムが札付きのワルとの交わりを描く「ワルいヤツ」などが収録。 (収録作品) 黄昏の闇に塗れて Splash ナズナの咲く頃 番頭さん 人形の館 人形の館 ~桃華の気持ち~ スキ・フシギ・了解 Black Doctor White Nurse ワルいヤツ ひみつ基地 クラミツハの神 ハルとボクの夏休み ずーっとだいすき 4冊目の単行本。2018年5月31日(*6)発売。 青年が永遠の命を持つ美少女との出会いと交流を描く「梟の館」「梟の瞬き」をはじめ、 陸上選手のアスリートとまぐわっていく「Break Record」「Break Out」などが収録。 (収録作品) Break Record 梟の館 梟の瞬き ハルとボクの冬休み Break Out 彼と彼女の化学反応 多感な三日月 EROS IN WONDERLAND ブルー・ノエル スキサケ 原画 戦極姫シリーズ(3〜6) 天極姫 彼には言えない恥辱の関係 ~ごめんね、わたし先生のものにされちゃった……~ 夏色姉妹 ~幼馴染と真夏のヒメゴト~ 異常性愛 -妄想ビッチと真正ビッチ- 追記・修正は憧れの女性が実はビッチだったもしくはやっぱり一途だったかでお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/501.html
873 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/08/21(木) 05 42 22 ID nPemS6eR ※※※ 五代先生に呼ばれたのは、姉ではなく僕だった。 絵里ちゃんからの電話で、すぐに家に来て欲しいと云われた時は驚いたけれど、五代邸に来てみて、更 に驚いた。 五代邸の客間―― 以前僕が姉の絵を届けた時にやって来たその一室には、一枚の絵が置かれていたからだ。 僕が五代絵里に送った絵。 力を尽くして描いた絵が、そこにあった。 その絵の傍に、この家の住人二人がいる。 彼らの表情は複雑で、読むことが困難だ。 型通りの挨拶を済ませると、五代氏はすぐに口を開いた。 「見せて貰ったよ」 彼の瞳は僕の絵を映す。 2秒、3秒と水彩画を見つめて、やがて不機嫌そうな顔を作者に向けた。 「どういう事かね?」 「何がですか?」 「この絵だ」 この絵、と云われても返答に困る。 意図が読めない。 五代氏は僕に顔に、自身の顔を寄せた。 「きみが描いたのだろう?」 「そうですが・・・」 困惑する僕に、五代先生は更に歩み寄る。 迫力に押されて後退りする僕の肩を、彼は掴んだ。 「い、痛っ・・・」 「何てことをしてくれたんだ!!」 「え?あの、痛いんですけど・・・」 「そんなことはどうでも良い!何故!きみは!これ程の絵を描けることを黙っていたのだね!?前に云 っただろう?才有る者はそれを活かす義務があると。きみといい、鳴尾くんといい、優れた絵を描く力 があるにもかかわらず韜晦を決め込むのは何故だ?画壇の何が不満なんだ!?」 「お父さんやめて!くろさんが困ってる!」 絵里ちゃんが割って入り、僕は解放された。 五代氏はふぅふぅと息荒いまま、「すまん」と呟いた。 ――あれは求道者の成れの果て 嘗て姉は、五代氏をそう評したことがある。 夢破れてなお。 現実を突きつけられてなお。 河原で石積む子供のように。地を這い、迷路を彷徨う迷い子のように。 ただ、絵を求め続ける。 彼は絵画に憑かれた狂人の一種なのだと、姉は語った。 甚だ辛辣ではあるが、一面の事実ではあるのだろう。 甘粕櫻子あたりが聞けば、それは才有る者の傲慢だと自身を棚上げにしてせせら笑うに違いない。 ともあれ、姉に向けられる羨望の目は、彼女にとっては冷ややかな目を向ける程度の価値しかないもの なのだ。 その姉自身、才能のない分野を志しているのだから、人生とは皮肉に満ちている。 破れた翼をはためかせ、届かぬ天空を目指すと云う点では、両者に差はないのだから。 尤も、僕にも『それ』はあるのだが―― 「すみません」 僕は五代先生に頭を下げた。 「僕の絵を買ってくれるのは光栄ですし、素直に嬉しいです。でも、僕の志は絵にはありません。興味 の持てない世界で生きて往くには、僕の心は弱すぎるんです」 軽い気持ちで筆を振るうなど、本気で絵を愛している人に失礼だろう。 不覚悟の人間が踏み入れて良い世界ではない、と思う。 僕が筆を握るとしたら、それは姉がするように、あくまでも趣味としてだけだ。 それ以外にあるとしたら、可能性はひとつしかない。 874 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/08/21(木) 05 46 02 ID nPemS6eR 『留め置きたい』 その瞬間にしかないもの。 或は、これから失われてしまうもの。 そんな何かを永遠に残したいと願う時だけだろうと思う。 そして、そんなものは滅多にない。 だから、僕が描くものは、『この世に無い』ものだけなのだ。 「しかしなぁ・・・」 五代氏は落胆したような、しかし諦めきれないような顔をした。そして、そんな感情を『交渉』へと変 化させる。 この情熱はある意味で美徳ではあるのだろうが・・・。 あれやこれやと詰め寄る五代氏を宥め、すかし、僕は首を横に振り続ける。 しかし暫くすると、画家志望の少女が僕らの間に割って入った。 「もう!お父さん、くろさんを困らせないでって云ったでしょう」 絵里ちゃんは実父を一喝すると、往きましょ?と僕の腕を掴んだ。 部屋を出るときに見た先生の寂しそうな顔は、絵に向けられたものか娘に向けられたものか・・・。 「本当にすみませんでした」 絵里ちゃんはぺこぺこと頭を下げる。 見ているこちらが気の毒になるような謝り方だった。 「お父さん、一寸おかしいんです。絵ばっかりで、変なんです。だからと云ってくろさんに迷惑を掛け て良い訳じゃないのに、あんな風に詰め寄って・・・!」 謝罪から身内への怒りへとベクトルが変化している。僕は苦笑して見ているしかない。 やがて話題の線路から脱線したことに気づいた少女は、気恥ずかしそうに、すみませんと呟いた。 「絵里ちゃんはお父さんに似て情熱的だね」 「うぅ・・・。嬉しくないです」 そう云ってちいさくなる。 連れてこられたのは絵里ちゃんの部屋。 僅かに画材の匂いのする、趣味の良い部屋だった。年相応の女の子らしい可愛い部屋だと思う。 僕は失礼にならない範囲で室内を見廻す。彼女の作と思しき絵は一枚もない。 「絵里ちゃんは油絵を描くんだっけ?」 「は、はい。あまり上手くないですけど」 照れているのだろう、幽かに顔が赤い。 「ここには絵は置いてないんだね」 「一応、アトリエで描きます。油絵って、臭いが凄いから・・・」 「ああ、成程ね。見てみたかったんだけどな、絵里ちゃんの絵」 「私なんか全然・・・くろさんやしろさんみたいに、素敵な絵が描ければ良いんですけど・・・」 どうもこの娘は自分の絵に自身がないようだ。それが性格から来るものなのか、自らを弁えているのか 彼女の絵を見たことのない僕には判断の仕様がない。つまり、フォローも出来ない。知らないものは褒 めようがないからだ。 「しろさん、最近こちらへ来ないみたいですね。父が嘆いてました」 五代絵里は話題を自らの絵から、僕の姉へとチェンジする。視線の先には、姉の作と思われる色紙が飾 られている。 「しろさん、凄く綺麗な絵を描きますよね。くろさんもそう思うでしょう?」 「うん。しろ姉さんの絵は上手いと思う。ただ、僕の素人観察・・・いや、好みの問題かもしれないけ ど、しろ姉さんは『絵』よりも『書』のほうが芸術的な才能があると思う。だから、淡彩画とか水墨画 が上手なんじゃないかと」 姉が好んで描く絵も淡彩画なので、その辺は自分でも判っているのだろう。弟のことと歴史家への夢以 外は、限界を知悉している人なのだ。 ただ―― 「しろ姉さん、最近絵は描いてないんだ」 「そうなんですか?忙しいんでしょうか」 「そうじゃなくて・・・伏せってる事が多いんだ。体力的な問題だと思う」 この間の夜。 二人で星を見たあの日から、姉の体調は再び崩れた。 最近、少し痩せたように思う。 元が細い人だから、窶れたと表現する方が正しいのかも知れない。 食事の量も目に見えて減って来ている。風邪をひいているのだから、体力は付けなければならないはず なのだが、中中食べ物に手を付けない。 咳をする回数も増えた。 875 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/08/21(木) 05 49 53 ID nPemS6eR なのに、夜遅くまで何かごそごそやっている。 早く寝た方が良い。 僕は何度か声を掛けたけれど、襖越しに返ってくる声は、 「私は大丈夫。クロこそ早く寝なさい。この頃は特に冷えるから、温かくするのよ?」 などと、僕を心配するような言葉ばかりだ。 姉は自分に厳しい所為か、他者をより優先する傾向がある。 自分の生きた証よりも、他人の生きた証に拘泥した。 歴史を志すのも、或はその辺に理由があるのかも知れない。 (僕も――) 自分の生きた証には興味がない。 自分が尊敬する人。自分が大切だと感じた人。 もしも記録に残すのなら、そう思える人だけだろう。 なんだかとても、姉に逢いたくなった。 ※※※ 予定よりも早く、家路についた。 絵里ちゃんや五代先生には食事でもどうかと散散引き留められたけれども断った。 兎も角、無性に姉の顔が見たかったのだ。 絵里ちゃんは酷く残念そうな顔をしていた。そのことだけが少し心苦しい。けれど、どうにもこうにも 僕は家に帰りたかったのである。 そうして、家の近くまでやって来た。この大通りを越えれば、すぐに自宅である。 「あ」 と、間の抜けた声を上げたのはその時。知己を見かけた時だ。 さして親しくもなく、気安い相手でもない。 だけど、姉とは深い繋がりのある人物が、視界に入った。 すぐ傍には扉の開いたタクシー。 彼女はこれから、それに乗り込むのだろう。 僕の間の抜けた声で気付いたのか。件の人物は視線だけで僕に挨拶をする。 僕は近くに駆け寄って、その知己に頭を垂れた。 「こんにちは。日ノ本(ひのもと)さん」 彼女――日ノ本朝歌は無言で頷く。 少女。 そう呼ぶべき容貌をしたこの女性は、僕は勿論、姉よりも遙かに上の年齢である。 けれど、10代で通用する容姿は僕の姉よりも年少に見えることだろう。 左の目には眼帯があり、片手には杖をついていて、弓手には手袋がされていた。 それは酷い怪我をした名残であり、隻眼であるのも、杖なしでは歩行が困難なのも、左手の薬指が欠損 しているのも、皆同じ理由であるらしい。現在も通院や入退院を繰り返している、とは姉の説明だ。 ちなみに日ノ本、と云う姓は本来のものでなく彼女自身が勝手にそう名乗っているだけなのだそうだ。 偽名を使う理由は知らない。詮索するつもりもなければ、興味もない。彼女の自由だ。 杖のない方の手には、紙袋がぶら下がっている。中身は重そうな書籍の束だった。 失礼とは思ったが、鳴尾家の蔵書が見えたので、僕は覗き込んだ。 「うちに寄ってたんですか?」 「本の交換。至路と私の手持ちを取り替えただけ」 鳴尾至路と日ノ本朝歌は先輩後輩の間柄である。 姉は文系、彼女は理系で読む本の種類は異なるが、重なる部分も多い。 だから、興味のある本は両者の間でやり取りされることが多く、一緒に図書館にも出掛けている。 二人がよく往く丘の上の私設図書館は完全な会員制で、更に階級分けがされている。 僕は姉の紹介で初等階級を持っている。これは、入館のみ可能だが、本の貸し出しが不可である。 第二階級で貸し出し許可。第三階級で上層部エリアへの進入許可。第四階級で上層エリアの貸し出し許 可。第五階級で地下エリアへの進入が可能であるらしい。 姉は第三、日ノ本さんは第四の階級を持つ。第五以上は都市伝説と云われるくらい、持ち主が少ないよ うだ。尤も、第三階級持ちですら、充分レアなのだが。 「病気?」 主語を抜いた質問が僕へ向けられる。 淡淡とした、抑揚のないしゃべり方だ。別に機嫌が悪いわけではなく、これが自然なのである。 彼女は姉のことを尋ねているのだと了解した。 「風邪・・・みたいです。日ノ本さんにも判りましたか」 「少し窶れていた。気にしてあげる方が良い」 876 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/08/21(木) 05 54 08 ID nPemS6eR ひとつしかない彼女の瞳は、僕には向いていない。真っ直ぐに前方だけを映している。 あまり他人と顔を合わせないのは、彼女のスタイルだ。 僕は明後日の方向に向いた顔に、そうしますと首肯した。 「姉孝行は、愛情を向けられた分くらいは還元したいですから」 彼女は無言で頷き、タクシーに乗り込む。扉が閉まり、窓が開いた。 「本当に大切なものは失ってからでは遅い。後悔の無いように」 そんな言葉を残して、車は発進した。 何かを失ったことでもあるような、重い一言だった。 その通りではあるのだろう、と僕は思う。 風邪とは云え、咳き込んでいる姉の姿を見るのは辛い。 車は景色の向う側へと溶け込んで往く。 僕はそれを見送らず、家に向かって駆けだした。 「それでこんなに早く帰ってきたの?」 姉は苦笑したようだった。 僕がいる場所は、姉の部屋――和室である。 「過ぎたるはなお及ばざるが如し。少し心配しすぎ」 姉の言葉は冷静だ。 冷静ではあるが、彼女は僕をしっかりと抱きしめており、凜としているはずの声が妙に上ずっている。 随分と機嫌が良さそうだった。 「クロは気遣いが多すぎる。それは美徳ではあるけれど、欠点でもあるのよ?」 すりすり。 「私は平気だと何度も云っているでしょう?」 むにむに。 「折角厚意で食事に誘われたのだから、断ること無かったのに」 ぐりぐり。 しろ姉さん、言行不一致です。 遅くなったら絶対に「誘われても遠慮しなさい」と怒るのだろうに。 まあ良いかと、僕は苦笑した。 「日ノ本さん、来てたんだね」 僕は姉から抜け出そうと試みる。 「ええ。本の交換。用があるからってすぐに帰ったけど」 姉は優雅にそれを阻止する。 甘粕先輩ほどではないが、姉も組技に熟達している。抵抗は無駄に終わるだろう。 僕がぐったりと力を抜くと、年長の身内はぬいぐるみを弄ぶ童女のように弟の感触を楽しみだした。 (恥ずかしいなぁ・・・) 誰に見られるわけではないけれど、顔が赤くなる。 姉はお構いなしに、身体を密着させた。 抱きしめられる感触は、以前とは違い、硬く感じる。 それは、彼女が痩せ細ったからだろう。 姉の身体は確かに衰えている。それが、少し不安だ。 口にすれば、気にしすぎると窘められるのだろうか。 878 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/08/21(木) 05 58 01 ID nPemS6eR 「クロ、貴方に渡すものがあるの」 姉は僕を解放する。自分で手放したくせに、妙に名残惜しそうにしているのはどうしたことか。 彼女は物陰に隠すように置いておいた籠を引き寄せた。籠の中には毛糸や編み棒などが入っている。 「はい、これ。プレゼント」 「腹巻き・・・」 「最近凄く冷えるでしょう?温かくしておかないと」 姉は腹巻きを笑顔で手渡す。僕は温かな防寒具を眺めて呟いた。 「最近夜にごそごそやってたのって、これが理由?」 「本当はもっと早く渡したかったのだけれど」 コホコホと口元を押さえて笑う。 その姿に、僕は眉を寄せた。 「どうしたの?腹巻きじゃ嬉しくなかった?」 「そうじゃない。そうじゃなくて、こんな事でしろ姉さんが無理してたと思うと・・・」 「こんなこと、じゃないわよ」 ぎゅっと、彼女は僕を抱きしめる。 抵抗はしない。 出来るはずがない。 「私にとっては、クロが健康でいてくれることが一番大切だもの。急ぐのは当然でしょう?」 「でも、僕は健康だよ。病気なのはしろ姉さんのほうだ」 「そう。クロは健康。だから、身体を冷やさないようにしないと」 「・・・・・・・」 何と云えば良いのか、言葉が出ない。 微笑を浮かべる姉は、矢張りその顔に疲れを感じさせる。 「・・・ありがとう、しろ姉さん。ずっと大切にするよ」 「ものを大事にするのは確かに大切。だけど、ずっとじゃなくて良い。痛んだら、また私が作ってあげ るから。来年も。その先も」 「・・・ありがとう」 僕は姉の身体に腕を廻した。細くなったと改めて思う。 「良かった。喜んでくれて・・・」 姉はそう云って、それから咳をした。 籠もるような、嫌な仕方の咳だった。 完全に抱き合う格好になっている僕には、姉の顔が見えない。 見えるのは、部屋の主が書いたと思しき一枚の掛け軸。 そこには彼女らしい達筆で唯二文字。 『偕老』 と、記されていた。